スタッフコラム「ゴルフボディを作る」

第312回 勝つための水分補給のポイント

ゴルファーにとって、安定したコンディションでプレーをすることはとても大切です。コンディション作りに欠かせないのが、バランスの取れた食事を摂ること。しかし、それだけではなく、水分補給も同様に大切です。そこで今回は、ゴルファーの皆さんが水分補給を考えるにあたり、おさえておきたい3つのポイントをご紹介します。

  • 水分補給に対する考え方・行動の問題
  • 水分不足によるパフォーマンスへの影響
  • 日ごろから水分補給を意識した食事を

水分補給に対する考え方・行動の問題(※1)

2013年の全米シニアオープンで、ピータ・ヤコブセンが脱水で大会を棄権したことは、記憶に新しいかと思います。アメリカでは、気づかずに脱水状態でプレーをしているゴルファーが多いことから、認定ゴルフパフォーマンススペシャリストや医師らが、水分補給の大切さを啓蒙しています。

その中に興味深い調査がありました。それは、PGAやLPGAのツアー選手をクライアントに持つ、ゴルフ専門のスポーツ心理学・公認カウンセラーが、なかなか結果を出せずに悩んでいるツアー選手を対象に行ったウエルネス調査です。その結果、意外にも多くのゴルファーが、脱水状態でプレーをしていることがわかったそうです。

なぜ脱水状態でプレーをしてしまうのか?を検証する為に、さらに調査を行った結果、練習中・試合中は基本的に電解質不足であること以外に、次の8つが脱水状態を起こしている原因であることが分かったそうです。

  1. 試合中にトイレに頻繁に行くことでプレーの中断をしたくない
  2. 緊張していてあまり水分補給ができない、水分補給を頻繁に行うとプロ選手っぽく見えない
  3. 喉の渇きを感じないので水分補給をしない
  4. 練習中・プレー中にどれぐらい汗をかいているかを理解していない
  5. 水分補給としてコーヒーやアルコールを飲んでいる
  6. 減塩が健康によいからという情報のもと、塩を使うことが体に悪いと思い込んで、極端な減塩食を摂っている
  7. 準備不足や、給水場が複数あるという思い込みからマイボトルを持参しない
  8. 水の味が嫌い、水分は甘い飲料水で補給したい。

普段の考え方や行動が原因で、知らないうちに脱水を起こしているということが、この調査からわかると思います。

水分不足によるパフォーマンスへの影響

糖質は筋肉のエネルギー源です。糖質が少ないと、筋肉を動かすのに必要なエネルギーが不足し、筋肉自体が分解されエネルギーとなります。運動後の筋肉は、分解が合成を上回っています。そのままでは筋肉の分解が進んでしまい、筋肉が減ってしまうのです。よって、トレーニングの効果を出すには、筋肉の修復に必要な良質のタンパク質と糖質を補給することが大切です。

できるだけ早いタイミングで摂ることが望ましい

人間の体には水分が多く含まれています。血液の85%、筋肉の80%、脳の75%、骨の25%が水分です。成人男性の場合、体重の60%が「体液」と呼ばれる水分でできているのです。体液は、飲み物等で摂った水分が腸から吸収され血液等になったもので、全身を絶えず循環しています。水分が減ると血液量が減り、血圧が下がり、必要な栄養素が満足に運搬されなくなり、脳への血液量も減ります。その結果、集中力が低下します。また、汗をかくと、体液に含まれている電解質が失われます。電解質を補給しないと神経や筋肉に悪影響が出て、脚がつったりしびれたり脱力が起きます。

脱水状態と認知運動パフォーマンス(cognitive motor performance)について、いくつかの論文が発表されていますが、2012年には、ゴルファーの認知運動パフォーマンスへの影響についての論文が発表されました(※2)。その論文によると、軽度の脱水状態(1〜3%の脱水状態・のどの渇きを感じる程度)でも、飛距離・正確性・距離感といった、スコアに直接関係のある認知運動パフォーマンスに著しく影響がでると結論づけています。

20代から体内で蓄えられる水分量が減る

一般的に、乳児の水分率が70%なのに対し、成人の体内水分率は60%。高齢者になると50%〜55%と、年齢を重ねるごとに水分率は減っていきます(※3)。それは、年齢とともに筋肉量が減少し、細胞の水分保持能力も低下、その結果、体内の水分量が減るからです。また、体内の水分量の調整に必要な腎臓機能の低下や、排泄量の増加、喉の渇きを感じにくくなる等の体内の感覚の鈍化からも、脱水状態になりやすくなります。

体内水分量の減少をコントロールするには、筋肉量の減少をコントロールすること、こまめに水分を補給することが大切です。体が吸収できる水分量は、30分間に200cc程度。また、吸収速度は1時間に200cc〜700ccと言われています。つまり、1時間当たり800mlの水分しか吸収されません。したがって、一気に大量の水を飲んでも、吸収されずに排出されてしまうのです。また、汗で失われた電解質を含む水分を摂ることも重要になりますが、併せて糖分を含む飲料を摂ることで、血中での水分保持率が高くなることが報告されています(※4)

このように、安定したコンディショニンでプレーをするには、運動レベル・年齢・達成したい目標に合わせたトレーニングを行うとともに、水分補給に関する知識も大切になってきます。

日ごろから水分補給を意識した食事を

前述の通り、のどの渇きを感じたときは、既に体は脱水状態です。また、プレー後に水分補給をしてもパフォーマンスの向上には不十分ということになります。したがって、年齢・運動レベルを考慮し、日ごろから意識的に水分補給をすることが、コンディション作りには欠かせません。そして、ラウンド中も適宜且つ適切に水分補給をすることで、安定したコンディションにつながり、脱水によるプレーへの影響を防ぐことができます。

我々は一般的に、1日約2〜2.5リットルの水を摂るのがよいと言われています。水分は植物由来のものから20%〜30%、その他の食べ物から70%〜80%摂取できることから、実際は1日1.5リットルの水を摂ればよい計算になります。もちろん、スポーツ等で活動レベルが高い場合は、それ以上の水分が必要となることは言うまでもありません。

しかし、沢山のお水を飲むことを困難に感じる人もいます。また、カフェインが含まれているコーヒーやお茶を好んで飲んでいる場合、利尿作用があるため水分補給をしたことにはなりません。体内の水が慢性的に不足すると慢性脱水になります。慢性脱水になると、体調を崩しやすくなるだけでなく、大きな病気になる可能性もでてきます。

そこで、抑えておきたいのは、野菜やフルーツからも水分は摂れるということ。野菜やフルーツには、ビタミン・ミネラル等コンディショニングに必要な栄養素も含まれています。また、ルチンやゼアキサンチンが含まれている食物を摂ることでも、効率よく水分を蓄えることができると言われています。日ごろから積極的に野菜やフルーツを摂り、こまめに水分補給をすることが、プレー前のコンディション作りには大切です。それにより、スタミナの改善や、脱水が原因の集中力・感情コントロールの低下を防ぐことも可能となります。日ごろの準備は、安定したコンディションでプレーをする為に欠かせません。また、それを継続することが大切です。今日から少しずつ、野菜・フルーツを摂ってみてはいかがでしょうか?

出典:
※1https://www.agedefyinggolf.com/hydration-improves-golf-performance-in-golfers-over-50/)
https://www.golfpsych.com/golfers-dehydrated-8-reasons-why-competitive-golfers/
※2Osterberg KL, Pallardy SE, Johnson RJ, Horswill CA. Carbohydrate exerts a mild influence on fluid retention following exercise-induced dehydration. J Appl Physiol. 2010; 108: 245-250
※3熱中症環境保護マニュアル2014
※4Smith MF, Newll AJ, Maker MR J strength Cond Res, 2012 Nov 26 (11):3075-80.doi:10.1519/JSC.0b013e318245bea7.
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Lottie

IIN™公認ホリスティックヘルスコーチ、ACC公認スポーツ栄養スペシャリスト、ACCA公認アスレチックコンディショニングコーチベーシック、日本スーパーフード協会公認スーパーフードエキスパート

ホリスティックヘルスコーチは、ウエルネスのプロとしてクライアントのニーズに合わせたプログラムのもとコーチングを行います。その特徴は、人間関係・運動・キャリア等を食事と同等に扱いクライアントを取り巻く環境をホリスティックに捉え、クライアントが望む目標を達成できるようにサポートをしていきます。アスリート・ビジネスエグゼクティブ・プロフェッショナルの皆さんが、自分らしく「心」「技」「体」のバランスを整え、目標達成ができるように、情報発信やホリスティックヘルスコーチングを行っています。

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