トータルゴルフフィットネス 管理栄養士の中島です。
「手足の先が冷たい」
「体が芯から冷える」
「布団に入っても足が温まらない」
冬になると、多くの人がこうした冷えの悩みを抱えます。冷えは単なる不快感だけでなく、免疫力の低下、疲労感、肩こり、不眠など、さまざまな体調不良に影響を及ぼします。冷えを根本的に改善するには、外側から温めるだけでなく、体の内側から熱を生み出す力を高めることが重要です。今回は体を芯から温める栄養素と、冬の食事での実践的な取り入れ方を解説します!
冷えが起こるメカニズム

体温は、食事から摂取した栄養素をエネルギーに変換する際に生じる熱によって維持されます。この過程を基礎代謝といい、呼吸、心臓の拍動、体温調節など最低限の生命維持に使われるエネルギー量のことです。
冷えが起こる主な原因は3つ考えられます。
- 基礎代謝の低下:栄養不足や筋肉量の減少により基礎代謝が低下し、体内で熱が十分に生産されない
- 血流の悪化:血液が体の末端まで十分に届かず、手足が冷える
- 自律神経の乱れ:体温調節機能が正常に働かないことで、体温のコントロールが乱れる
これらの原因に対して適切な栄養素を摂取することで、体を温める力を高めることができます。
体を温める栄養素はこれ!
タンパク質:熱産生の要

タンパク質は、三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)の中で最も熱産生効果が高い栄養素です。食事で摂取したタンパク質のうち約30%が消化・吸収の過程で熱に変換されます。これを食事誘発性熱産生(DIT)といいます。
また、タンパク質が不足すると筋肉量が減少し、基礎代謝が低下します。筋肉は体内で最も熱を生み出す組織であり、筋肉量を維持することが冷え対策の基本と言えます。
タンパク質を豊富に含む食材:
- 肉類(鶏肉、豚肉、牛肉)
- 魚類(鮭、サバ、ブリ)
- 卵
- 大豆製品(豆腐、納豆)
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)
1日の推奨摂取量は体重1kgあたり約1.2〜1.5gです。体重60kgの方であれば、タンパク質の摂取量は80g前後が目安です。毎食、手のひらサイズの肉や魚を摂る様に心がけましょう。
鉄分:血液を通じて熱を運ぶ

鉄分は血液中のヘモグロビンの材料となり、全身に酸素を運ぶ役割を果たします。鉄分が不足すると酸素の供給が滞り、細胞でのエネルギー産生が低下します。この結果体温が上がりにくくなり、冷えを感じやすくなります。
特に女性は月経により鉄分を失いやすく、冷え性に悩む方が多い傾向があります。
鉄分を豊富に含む食材:
- レバー(鶏、豚)
- 赤身の肉(牛もも肉)
- 魚類(カツオ、マグロ)
- あさり、しじみ
- 小松菜、ほうれん草
- ひじき、海苔
鉄分には、肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜や海藻に含まれる非ヘム鉄があります。ヘム鉄の方が吸収率が高く、動物性食品の方が鉄を摂る効率は良いと言えます。一方、非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が向上させることができます。様々な食品を活用しましょう!
ビタミンE:血流を改善する

ビタミンEは強力な抗酸化作用を持ち、血管を保護します。また血行を促進する働きがあり、末端まで血液を届けやすくします。冷えによる手足の冷たさを改善するにはビタミンEも必要です。
ビタミンEを豊富に含む食材:
- ナッツ類(アーモンド、ヘーゼルナッツ)
- かぼちゃ
- アボカド
- うなぎ
- サーモン
- ほうれん草
アーモンド10粒で約3mg、かぼちゃ100gで約5mgのビタミンEを摂ることができます。1日の推奨量は成人男性で6.0〜7.0mg、女性で5.0〜6.5mgです。
ビタミンB群:エネルギー代謝を促進
ビタミンB群(特にB1、B2、B6)は、三大栄養素をエネルギーに変換する際に必要な補酵素です。これらが不足すると、栄養素を摂取しても効率的にエネルギーに変換できず、体温が上がりにくくなります。
ビタミンB群を豊富に含む食材:
- 豚肉(ビタミンB1)
- レバー(ビタミンB2、B6)
- 玄米、全粒粉パン(ビタミンB1)
- 納豆(ビタミンB2)
- バナナ(ビタミンB6)
- 卵(ビタミンB2)
豚肉はビタミンB1が豊富で、疲労回復と代謝促進に優れた食材です。冬の鍋料理に豚肉を入れることで、体を温めながら栄養補給ができます。
ショウガオールとカプサイシン:体を温める機能性成分

生姜に含まれるショウガオールは血行を促進し、体を内側から温める効果があります。生の生姜に含まれるジンゲロールを加熱・乾燥させることで、ショウガオールに変化します。そのため、生姜は加熱調理するか、乾燥させた生姜パウダーを使うと効果的です。
唐辛子に含まれるカプサイシンは、交感神経を刺激し、エネルギー代謝を高めます。体温を上昇させ、発汗を促す作用があります。
活用方法:
- 生姜湯、生姜紅茶
- 味噌汁や鍋料理に生姜を加える
- キムチ、唐辛子を使った料理
ただし、胃腸が弱い方は刺激が強すぎる場合があります。まずは少量から試してみてください。
実践的な食事例
朝食
- 納豆ご飯(タンパク質、ビタミンB群)
- 生姜入り味噌汁(根菜、生姜)
- 焼き鮭(タンパク質、ビタミンE)
- ほうれん草のおひたし(鉄分、ビタミンE)
昼食
- 豚肉と根菜の生姜焼き(タンパク質、ビタミンB1、生姜)
- 玄米ご飯(ビタミンB群)
- 小松菜のナムル(鉄分、ビタミンE)
夕食
- ブリ大根(タンパク質、根菜)
- かぼちゃの煮物(ビタミンE)
- キムチ鍋(タンパク質、カプサイシン、野菜)
- ご飯
飲み物
- 生姜紅茶(ショウガオール)
- ホットミルク(タンパク質、カルシウム)
- ほうじ茶、黒豆茶(体を温める)
食べ方のポイント
よく噛んで食べる
咀嚼により消化酵素の分泌が促進され、食事誘発性熱産生が高まります。よく噛むことで、体が温まりやすくなります。
温かい料理を選ぶ
鍋料理、煮物、スープなど、温かい調理法を選ぶことで、物理的にも体が温まります。また、食材の栄養素を余すことなく摂取できます。
朝食を抜かない
朝食を抜くと体温が上がりにくく、1日中冷えを感じやすくなります。朝食でしっかりタンパク質を摂取し、体温を上げるスイッチを入れましょう。
適度な運動と組み合わせる
食事だけでなく、ウォーキングやストレッチなどの適度な運動を組み合わせることで筋肉量が維持され、基礎代謝が向上します。
おわりに
冷えは日々の食事を見直すことで大きく改善できます。タンパク質、鉄分、ビタミンE、ビタミンB群といった栄養素を意識的に摂取し、生姜や唐辛子などの機能性成分を活用することで、体を芯から温める力が高まります。
冬の旬食材である根菜類、脂の乗った魚、発酵食品を日々の食事に取り入れ、温かい調理法を選ぶことが、冷え対策の基本です。外側から温めるだけでなく、体の内側から熱を生み出す食事を心がけ、寒い冬を快適に過ごしましょう!


