トータルゴルフフィットネス 管理栄養士の中島です。
「夜中に突然ふくらはぎがつって目が覚める」
「朝起きた時に足がつる」
皆さんもこの様な経験はありませんか。医学的に『こむら返り』と呼ばれるこの現象は、加齢とともに頻度が増える傾向にあります。こむら返りの主な原因は筋肉の疲労だけでなく、体内のミネラルバランスの乱れも原因です。今回はこのこむら返りを予防するために必要な栄養素と、日々の食事での実践的な取り入れ方を解説します。
こむら返りのメカニズム

筋肉は神経からの信号により収縮と弛緩を繰り返します。この際にカルシウムやマグネシウム、カリウム、ナトリウムといったミネラル(電解質)が重要な役割を果たします。
カルシウムとマグネシウムは筋肉の収縮と弛緩をコントロールします。カルシウムは筋肉を収縮させ、マグネシウムは筋肉を弛緩させる働きがあります。このバランスが崩れると筋肉が過度に収縮したまま元に戻らず、つった状態になります。
また、カリウムとナトリウムは神経の信号伝達に関与します。これらのミネラルが不足すると神経が正常に機能せず、筋肉への指令が乱れ、異常な収縮が起こりやすくなります。
加齢により腎機能の低下や発汗機能の変化、薬の服用などでミネラルバランスは乱れやすくなります。このため、シニア世代は特に意識的にミネラルを摂取する必要があります。
こむら返りを予防するミネラル
カルシウム:筋肉収縮の司令塔
カルシウムは骨の健康だけでなく、筋肉の収縮にも不可欠です。1日の推奨摂取量は成人男性で750mg程度、女性で650mg程度です。
カルシウムを豊富に含む食材
- 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品
- 魚全般(特に骨も丸ごと食べられる小魚)
- 小松菜、チンゲン菜などの緑黄色野菜
- 豆腐、納豆などの大豆製品
例として、朝食に牛乳1杯(200ml)とヨーグルト1個、夕食に豆腐の味噌汁と小松菜のおひたしを加えると、1日の推奨量をほぼ満たすことができます。ただし、牛乳の摂取についてはその是非が問われており、私も積極的に摂ることはおすすめしていません。日々の食事で魚を積極的に摂ることで、必要量を満たすことができます。
マグネシウム:筋肉弛緩の鍵
マグネシウムは筋肉を弛緩させる働きがあります。よって、不足すると筋肉が緊張状態になりやすく、つりやすくなります。1日の推奨摂取量は、成人男性で360mg程度、女性で280mg程度です。
マグネシウムを豊富に含む食材:
- 海藻類(ひじき、わかめ、昆布)
- ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)
- 大豆製品(納豆、豆腐、枝豆)
- 玄米、全粒粉パン
- バナナ
納豆1パック(約50g)で約50mg、アーモンド10粒で約30mg、バナナ1本で約32mgのマグネシウムを摂ることができます。ラウンド中の間食にナッツやバナナを取り入れるのも効果的です。
カリウム:神経伝達をサポート
カリウムは神経の信号伝達を正常に保ち、筋肉の機能を維持します。1日の目標摂取量は、成人男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です。
カリウムを豊富に含む食材:
- バナナ、キウイ、メロン、アボカドなどの果物
- さつまいも、里芋、じゃがいもなどの芋類
- ほうれん草、小松菜などの野菜
- 大豆製品
バナナ1本で約360mg、さつまいも中1本(200g)で約940mg、ほうれん草1束(200g)で約1,380mgのカリウムを摂取できます。ただし、腎機能が低下している方はカリウムの過剰摂取に注意が必要です。医師に相談の上、適切な量を摂取しましょう。
ナトリウム:適度な塩分補給
ナトリウム(塩分)も、神経伝達と筋肉機能に必要です。しかし、現代の日本人は塩分を過剰摂取しがちで、様々な疾患に繋がるリスクがあります。1日の目標量は、成人男性で7.5g未満、女性で6.5g未満です。
通常の食事で十分な量を摂取することができますが、タイミングが重要です。普段の食事では、できる限り味の濃いもの(加工食品を中心に)を避けましょう。一方、発汗が多い夏場や運動中は、適度に塩分を補給することが重要です。梅干しや味噌汁、漬物などの自然な形で摂りましょう。
ビタミンB1とタンパク質の役割
ビタミンB1:エネルギー代謝を促進
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換する際に必要な補酵素です。不足すると筋肉の疲労に繋がりやすくなります。バランスのとれた食事をしている限りは不足しにくいと言われる栄養素ですが、不規則な生活をしている時や、旅行に行った時などは注意が必要です。
ビタミンB1を豊富に含む食材:
- 豚肉(特にヒレ肉、もも肉)
- 玄米、全粒粉パン
- 大豆製品(納豆、豆腐)
- うなぎ
豚肉100gで約0.9mg、納豆1パックで約0.07mgのビタミンB1を摂取できます。ビタミンB1と言えば豚肉!と言われるほど、代表的な食材です。
タンパク質:筋肉の材料
筋肉の材料であるタンパク質が不足すると、筋肉の質が低下します。1日の推奨摂取量は体重1kgあたり約1.0〜1.2gです。体重60kgの方であれば、60〜72gが目安です。特別な疾患をお持ちでなく、ゴルフや筋力トレーニングなど日々運動される皆さんは、体重1kgあたり1.5g程度がおすすめです。
良質なタンパク質源:
- 肉類(鶏肉、豚肉、牛肉)
- 魚類(鮭、サバ、ブリ)
- 卵
- 大豆製品(豆腐、納豆)
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)
毎食、手のひらサイズの肉や魚、豆腐を摂ることで、必要量を満たせます。
水分補給の重要性

ミネラルバランスは体内の水分量と密接に関係しています。水分が不足すると血液中のミネラル濃度が変化し、筋肉のつりを引き起こしやすくなります。
年齢を重ねるにつれて喉の渇きは感じにくくなるため、意識的に水分を摂取することが重要です。水分の摂取は飲料だけでなく、食事からも可能です。飲料としての水は1日1.5リットルを目安に、こまめな水分補給を心がけましましょう。
また、就寝前にコップ1杯の水を飲むことで夜間の足のつりを予防できます。頻尿が気になる方も多いかと思いますが、就寝の1〜2時間前には飲むようにしましょう。
実践的な食事例
朝食
- 納豆ご飯(納豆でマグネシウム、カルシウム、ビタミンB1)
- 味噌汁(わかめと豆腐でマグネシウム、カルシウム)
- 焼き魚(タンパク質)
- 小松菜のおひたし(カルシウム、カリウム)
- ヨーグルト(カルシウム)
- バナナ(カリウム、マグネシウム)
昼食
- 豚肉の生姜焼き(ビタミンB1、タンパク質)
- ご飯(玄米がおすすめ)
- ほうれん草の胡麻和え(カリウム、マグネシウム)
- 味噌汁
夕食
- 焼き鮭(タンパク質)
- さつまいもの煮物(カリウム)
- 豆腐とわかめの味噌汁(マグネシウム、カルシウム)
- ひじきの煮物(マグネシウム、鉄分)
- ご飯
間食
- アーモンド10粒(マグネシウム)
- バナナ1本(カリウム、マグネシウム)
- 牛乳1杯(カルシウム)
上記はあくまでも一例ですが、食事の基本は和食がおすすめです。比較的簡単に幅広い栄養を摂ることができます。
注意すべきポイント
薬との相互作用
利尿剤や血圧の薬を服用している方は、食材にも注意が必要です。上記の食材を摂ることでカリウムやマグネシウムの排出が増えたり、逆に蓄積しやすくなったりする場合があります。サプリメントの使用や食事内容について、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
腎機能が低下している方
腎機能が低下している方は、カリウムの摂取制限が必要な場合があります。自己判断でカリウムを多く摂取せず、医師の指導に従ってください。
おわりに
こむら返りは日常生活の質を大きく低下させる不快な症状ですが、ミネラルバランスを整える食事を心がけることで多くの場合予防できます。カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムの4つのミネラルと、ビタミンB1、タンパク質、そして水分。様々な栄養素が関わりますので、大切なことは色々食べるということです。
特別な食材や高価なサプリメントは必要ありません。納豆、豆腐、小魚、海藻、緑黄色野菜、といった日本古来の身近な食材を毎日の食事に意識的に取り入れましょう。今日から一緒にミネラルバランスを意識した食生活を始めましょう!



