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旬を食べる価値〜冬の食材で見る栄養価の違い〜

「旬の食材を食べる」という習慣は、日本の食文化に深く根付いています。しかし、現代では一年中さまざまな食材が手に入ります。このことが旬を意識する機会が減っているのも事実です。実は旬の食材と旬外れの食材では、栄養価に大きな差があることが明らかになっています。今回は冬に旬を迎える代表的な食材を取り上げ、栄養価の違いを解説します!

旬の食材が栄養豊富な理由

旬の食材は、その植物や魚が最も成長に適した環境条件のもとで育ちます。適切な気温、日照時間、水分量により栄養素を最大限に蓄えることができます。

また、旬の時期には自然な成長サイクルに沿って収穫されるため、化学肥料やハウス栽培に頼ることが少なくなります。よって、本来の味わいと栄養価が保たれます。一方、旬外れの時期に出回る食材はハウス栽培や促成栽培、遠方からの輸送に頼ることが多くまります。栄養価が低下するとともに、新鮮さも失う傾向があります。

ほうれん草:ビタミンCが2倍

ビタミンC

ほうれん草の旬は11月から2月の冬季です。この時期のほうれん草はビタミンC含有量が多いことが特徴です。旬の冬採りほうれん草は、夏採りのものと比べてビタミンCが約1.5〜2倍多く含まれています。この差は気温の違いによるものです。ほうれん草は冬の寒さに耐えるため、細胞内に糖分やビタミンCを蓄積します。これにより甘みが増し栄養価も高まります。

その他の栄養素

ビタミンCだけでなく、カルシウムマグネシウム、そのほかの抗酸化成分も冬彩りのものの方が多く含まれます。

ビタミンCやそのほかの抗酸化成分は免疫機能を高め、カルシウムは骨の健康に、マグネシウムは筋肉の収縮や弛緩生活習慣病の予防にも関わります。風邪やインフルエンザが流行する冬に旬のほうれん草を食べることは、理にかなった健康習慣といえます。

大根:甘みや旨みの違い

甘味

大根の旬は11月から2月です。この時期の大根はみずみずしく甘みがあり、辛味も程よく調和しています。特に秋から冬にかけての大根には糖分やうま味が多いことが報告されています。旬の大根は適度な辛味成分(イソチオシアネート)を含み、抗酸化作用抗菌作用があります。しかし、旬外れの大根は辛味が強すぎたり、逆に水っぽくなったりして食味が劣ります。

ビタミンC

大根のビタミンCは、主に皮の近くに集中しています。旬の冬採り大根はこのビタミンCが豊富ですが、夏の高温環境では低下しやすくなります。

また旬の大根は繊維質がきめ細かく、甘みと水分のバランスが良いため生食でも加熱調理でも美味しく食べられます。大根おろしにすることで酵素が活性しやすくなり、消化促進効果がさらに高まります。

みかん:カロテノイド

カロテノイド

みかんの旬も11月から2月です。この時期のみかんは、夏や春に出回る早生品種や晩生品種と比較して糖度と酸味のバランスが最も良く、栄養価も高くなります。

旬のみかんはカロテノイドが多いことが特徴です。みかんのオレンジ色はβ-クリプトキサンチンというカロテノイドによるものです。β-クリプトキサンチンは体内でビタミンAに変換されます。さらに、骨の健康維持や免疫機能の向上にも寄与することが研究で示されています。カロテノイドはその全般が強力な抗酸化作用を持ち、細胞の健康維持に役立ちます。

また糖度が高く、酸味とのバランスが取れているため自然な甘さを楽しめます。

薄皮と白いすじの栄養

みかんの薄皮や白いすじには、ペクチンやヘスペリジンといった食物繊維とポリフェノールが豊富に含まれています。これらは、腸内環境を整え血管の健康を保つ働きがあります。旬のみかんは薄皮も柔らかく食べやすいです。丸ごと食べることで、栄養価を最大限に摂取できます。

ブリ:脂質とDHA・EPA

旬と旬外れの栄養価の違い

ブリの旬は11月から2月の冬季です。この時期のブリは寒ブリと呼ばれ、脂の乗りが最高潮に達します。産卵前のブリは体にエネルギーを蓄えるため、脂質含有量が大幅に増加します。冬季のぶりが美味しいと言われる理由です。

DHA・EPAの健康効果

DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)も旬のブリに豊富です。これらはオメガ3脂肪酸の一種で、血液をサラサラにし、動脈硬化や心疾患のリスクを低減します。またDHAは脳の神経細胞に多く存在し、記憶力や集中力の維持にも重要です。

冬の寒ブリを週に1〜2回食べることで、これらの健康効果を効率的に得られます。刺身、照り焼き、ブリ大根など、さまざまな調理法で楽しめます。

味わいの違い

旬の寒ブリは脂が程よく乗り身が締まっていることから、刺身にしても煮物にしても美味です。一方、夏ブリは脂が少なく身がパサつきやすいため、食味が劣ります。旬外れのブリは養殖に頼ることが多くなり、天然の寒ブリと比較すると脂質の質や風味に違いが出ます。

旬の食材を選ぶことの経済的・環境的メリット

価格の違い

旬の食材は生産量が多く流通も盛んなことから、価格が比較的安定しています。逆に旬外れの食材はハウス栽培や遠方からの輸送にコストがかかるため、価格が高くなる傾向があります。

旬のほうれん草や大根は、旬外れの時期と比較して価格が30〜50%程度安くなることも珍しくありません。栄養価が高く、価格も手頃な旬の食材を選ぶことは経済的にも合理的です。

環境負荷の軽減

旬の食材は自然な環境で育ちます。よって、ハウス栽培に必要な暖房や照明などのエネルギー消費が少なく、環境負荷が低くなります。また地元で生産された旬の食材を選ぶことで、輸送に伴うCO2排出量も削減できます。

持続可能な食生活を実践する上でも、旬の食材を選ぶことは重要です。

おわりに

旬の食材は栄養価が高いだけではありません。味わいが豊かで、価格も手頃、そして環境にも優しいという、多くのメリットがあります。冬が旬のほうれん草、大根、みかん、ブリは、それぞれ旬外れの時期と比較してビタミンCやDHA、EPAが何倍も多く含まれています。

現代では一年中さまざまな食材が手に入りますが、旬を意識することで健康的で豊かな食生活を送ることができます。冬の食卓にこれらの旬の食材を積極的に取り入れ、今年の冬も元気に乗り切りましょう!

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中島 遥

管理栄養士 パーソナルトレーナー
長野県出身。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科にて管理栄養士、栄養教諭の資格を取得。卒業後は小学校で管理栄養士として働きながら、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの資格を取得。
現在、トータルゴルフフィットネスでは、「食事と運動」両方の面からお客様の望む身体作り、パフォーマンス向上に貢献できるよう努めている。

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