冬になると「なんとなく体調が悪い」「めまいや頭痛が続く」「夜眠れない」といった不調を訴える方が増えます。これらの症状は自律神経の乱れが原因となります。冬は暖房の効いた室内と寒い屋外の気温差が激しく、1日の中でも朝晩と日中の寒暖差が大きい季節です。この寒暖差に体が対応しようとして自律神経が過剰に働き、バランスを崩してしまうことが考えられます。
自律神経は呼吸、心拍、消化、体温調節など、私たちの意識とは無関係に体の機能をコントロールしている重要なシステムです。この自律神経のバランスを整えるには、適切な栄養素の摂取が不可欠です。今回は冬の寒暖差による自律神経の乱れを防ぎ、整える効果のある食材を3つご紹介します。
自律神経とは何か

自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成り立ちます。
交感神経は活動時や緊張時に優位になります。心拍数を上げ、血圧を上昇させ、体を戦闘モードにします。朝起きて活動を始める時、運動する時、ストレスを感じた時などに働きます。
副交感神経は休息時やリラックス時に優位になります。心拍数を下げ、消化を促進し、体を休息モードにします。食事の後、夜寝る前、リラックスしている時などに働きます。
この2つの神経がバランス良く働くことで、私たちの体は健康を保っています。しかし、寒暖差が激しい冬は体温調節のために交感神経が過剰に働き、バランスが崩れやすくなります。その結果、めまい、頭痛、倦怠感、不眠、冷え、消化不良、イライラといった症状が現れます。
自律神経を整える栄養素

自律神経のバランスを整えるには、以下の栄養素が重要です。
- マグネシウム:神経の興奮を抑え、リラックスを促す
- ビタミンB群:神経伝達物質の合成に必要
- カルシウム:神経の伝達をスムーズにする
- 鉄分:酸素供給を改善し、自律神経の働きをサポートする
- 亜鉛:神経伝達物質の調整
- トリプトファン:セロトニン(幸せホルモン)の材料
これらの栄養素を効率的に摂取できるのが、今回紹介する3つの食材です。
ほうれん草〜マグネシウムと鉄分の宝庫〜
栄養価の特徴
冬が旬のほうれん草は、自律神経を整える栄養素が豊富に含まれています。
ほうれん草100g (半束程度)あたりのおおよその主要栄養素:
- マグネシウム:69mg
- 鉄分:2.0mg
- カルシウム:49mg
- ビタミンB群(B1、B2、B6、葉酸):豊富
- ビタミンC:60mg(冬採りは夏採りの約3倍)
- β-カロテン:4,200μg
自律神経への効果
マグネシウムによるリラックス効果 マグネシウムは天然の精神安定剤とも呼ばれ、神経の興奮を抑える働きがあります。交感神経が過剰に働いている状態を和らげ、副交感神経を優位にすることでリラックス状態を作り出します。
現代人の多くがマグネシウム不足に陥っており、これが自律神経の乱れの一因となっています。ほうれん草を日常的に食べることでマグネシウムを補給し、自律神経のバランスを整えることができます。
鉄分による酸素供給の改善 鉄分は血液中のヘモグロビンの材料となり、全身に酸素を運びます。脳や神経系への酸素供給が改善されることで、自律神経の働きが正常化します。鉄分不足は、めまい、倦怠感、集中力の低下などを引き起こし、自律神経の乱れを悪化させます。
ビタミンB群による神経伝達のサポート ビタミンB群は神経伝達物質の合成に必要な補酵素です。特に葉酸とビタミンB6は、セロトニンやドーパミンといった、気分や感情をコントロールする神経伝達物質の生成に関わります。これらが不足すると、イライラや不安感が強くなり、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
抗酸化作用によるストレス軽減 ビタミンCとβ-カロテンは強力な抗酸化物質です。ストレスにより体内で発生する活性酸素を除去し、神経細胞を保護します。寒暖差というストレスに対抗するために、これらを含む抗酸化物質の摂取は重要です。
効果的な食べ方
おひたし、胡麻和え、味噌汁、ソテーなど、さまざまな調理法で楽しめます。マグネシウムは水溶性です。茹で時間は短めにし、茹で汁も味噌汁やスープに活用することで栄養を逃しません。油と一緒に調理することで、β-カロテンの吸収率が向上します。
牡蠣〜亜鉛とタウリンで神経をサポート〜
栄養価の特徴
冬が旬の牡蠣は、海のミルクと呼ばれるほど栄養価が高く、自律神経を整える成分が豊富です。
牡蠣100g (5粒程度)あたりのおおよその主要栄養素:
- 亜鉛:14.0mg(1日の推奨量の約1.5倍)
- 鉄分:2.1mg
- ビタミンB12:23.0μg(1日の推奨量の約11倍)
- タウリン:1,000mg
- カルシウム:84mg
- マグネシウム:65mg
自律神経への効果
亜鉛による神経伝達の調整 亜鉛は、神経伝達物質の合成と調整に不可欠なミネラルです。特に、セロトニンやGABA(ギャバ)といった気分を安定させる神経伝達物質の働きをサポートします。亜鉛が不足するとイライラや不安感が強くなり、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
牡蠣は食品の中で最も亜鉛含有量が多く、効率的に補給することができます。
ビタミンB12による神経の健康維持 ビタミンB12は神経細胞の髄鞘(ミエリン鞘)を形成し、神経の伝達速度を速める働きがあります。不足すると神経の伝達が乱れ、自律神経の機能が低下します。牡蠣はビタミンB12が非常に豊富で、神経系の健康維持に効果的です。
タウリンによる交感神経の抑制 タウリンはアミノ酸の一種で、交感神経の過剰な興奮を抑える働きがあります。寒暖差により交感神経が優位になりすぎている状態を和らげ、副交感神経とのバランスを整えます。また、タウリンには血圧を安定させる効果もあります。自律神経の乱れによる血圧変動を抑制することも考えられます。
カルシウムとマグネシウムのバランス 牡蠣には、カルシウムとマグネシウムがバランス良く含まれています。カルシウムは神経の伝達をスムーズにし、マグネシウムは神経の興奮を抑えます。この2つのミネラルが適切なバランスで存在することで、自律神経が正常に機能します。
効果的な食べ方
生牡蠣、牡蠣フライ、牡蠣鍋、牡蠣のソテーなど、牡蠣もさまざまな調理法で楽しめます。亜鉛やビタミンB12は熱に強いため、加熱調理しても栄養価はほとんど失われません。ただし、生食の場合は新鮮なものを選び、食中毒に注意しましょう。
味噌〜発酵の力で腸と神経を整える〜
栄養価と発酵食品の特性
味噌は、大豆を麹菌で発酵させた日本の伝統的な発酵食品です。発酵過程で、タンパク質がアミノ酸に分解され、栄養価が高まります。
味噌(大さじ1杯約18g)あたりのおおよその主要栄養素:
- タンパク質:2.3g
- ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、葉酸):豊富
- マグネシウム:14mg
- カルシウム:18mg
- トリプトファン:30mg
- GABA(ギャバ):発酵により生成
自律神経への効果
腸内環境の改善と脳腸相関 腸と脳は腸脳相関と呼ばれるほど密接な関係があります。腸内環境が乱れると、自律神経のバランスも崩れます。味噌に含まれる乳酸菌や麹菌は腸内環境を整え、善玉菌を増やします。腸内環境が良好になることで副交感神経が優位になりやすくなります。
トリプトファンによるセロトニン生成 トリプトファンはセロトニンの材料となる必須アミノ酸です。セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれます。気分を安定させ、不安やイライラを軽減します。また、セロトニンは夜になるとメラトニンに変換され、睡眠の質を向上させます。
味噌には、発酵により吸収しやすい形のトリプトファンが含まれており、効率的にセロトニンを生成できます。
GABAによるリラックス効果 GABA(γ-アミノ酪酸)は、抑制性の神経伝達物質です。脳の興奮を抑え、リラックスを促します。味噌の発酵過程でこのGABAが生成されます。
ビタミンB群による神経機能のサポート 味噌には、発酵により増加したビタミンB群が豊富に含まれています。これらは神経伝達物質の合成に必要であり、自律神経の正常な働きをサポートします。
効果的な食べ方
味噌汁が最も手軽で効果的です。毎日1杯の味噌汁を飲む習慣をつけることで、自律神経を整える栄養素を継続的に摂取できます。
具材にほうれん草や豆腐、わかめなどを加えることで、さらに栄養バランスが向上します。味噌は発酵食品のため、沸騰させると乳酸菌が死滅します。火を止めてから味噌を溶き入れることで、生きた菌を摂取できます。
塩分が気になる場合は、少し手間をかけて出汁をしっかり取ることで、味噌の量を減らしても美味しく食べられます。
自律神経を整える生活習慣
食事だけでなく、以下の生活習慣も自律神経のバランスを整えるために重要です。
- 規則正しい生活:毎日同じ時間に起床・就寝する
- 適度な運動:ウォーキングやストレッチなど軽めの運動を
- 入浴:38〜40度のぬるめのお湯にゆっくり浸かる
- 深呼吸:腹式呼吸で副交感神経を優位にする
- 寒暖差対策:服装で体温調節し、急激な温度変化を避ける
おわりに
冬の寒暖差による自律神経の乱れは、適切な食事で改善できる可能性があります。ほうれん草はマグネシウムや鉄分で神経をリラックスさせ、牡蠣は亜鉛やタウリンで神経伝達を整え、味噌は発酵の力で腸と脳をつなぎます。これらの食材は冬が旬で栄養価が最も高く、日本の食卓に馴染み深いものばかりです。
毎日の味噌汁にほうれん草を加える、といった小さな習慣の積み重ねが大切です。自律神経のバランスを整え、冬の不調を防ぎます。寒暖差に負けない、快適な冬を過ごしましょう!




