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STAFF COLUMN

「階段がきつい」は筋肉からのSOS!——管理栄養士が教える、食べて守る筋肉の話

トータルゴルフフィットネス 管理栄養士の中島です。

「最近、階段がきつくて…」「ラウンドの最後まで足がもたない」——皆様からこの様な声を耳にします。

これらは単なる体力不足ではなく、筋肉量や筋力の低下を示すサインかもしれません。加齢に伴う筋肉の衰え=サルコペニアは、転倒・骨折のリスクを高め、生活の質を大きく低下させます。

さらに、喘息や関節リウマチなどの治療で使われるステロイド薬も、筋肉を減少させる副作用があることが知られています。「薬を飲んでいたら筋力が落ちた気がする」という皆さんの訴えは、決して気のせいではないのです。

では、『栄養の力で筋肉を守ることはできるのでしょうか?』

今回は2022年に発表された2つの研究を参考に、筋肉を守る栄養について考えます!


なぜステロイド薬で筋肉が減るのか

ステロイド薬(プレドニゾロンやデキサメタゾンなど)は炎症を抑える優れた効果がある一方、筋肉には負担をかけます。

ステロイドを使用している方において「階段がきつくなった」「立ち上がるのが大変」という訴えがありますが、これはステロイドが速筋(瞬発力を出す筋肉)を特に減らしてしまうからです。速筋は、階段を上る、速く歩く、立ち上がるといった動作に必要な筋肉です。

体の中では何が起きているのでしょうか。ステロイドは筋肉の壊す働きを強め、作る働きを弱めてしまいます。その結果、筋肉がどんどん細くなってしまうと考えられます。

だからこそ、食事で筋肉を守る栄養素をしっかり摂ることが大切となります。


世界で研究されている栄養素

世界中で行われている113件の臨床試験を見ると、その約7割は何らかの病気を持つ患者を対象にしています。がん患者、肥満・糖尿病の方、骨や関節の病気を持つ方などです。残りの3割は、病気はないが加齢で筋肉が減ってきた高齢者を対象にしています。よって、筋肉を守る栄養は高齢者だけの問題ではありません。幅広い年代・状況で重要なテーマになっています。


注目の栄養素とその効果

研究で最も多く検証されているのは、たんぱく質やアミノ酸のサプリメントです。全体の約半数がサプリメント単独、1割程度がサプリメントと栄養指導の組み合わせで試験を行っています。では、具体的にどの様な栄養素が効果的なのでしょうか。

1. たんぱく質とアミノ酸——筋肉の材料を補う

BCAA (分岐鎖アミノ酸)は、バリン・ロイシン・イソロイシンという3つのアミノ酸の総称です。肉・魚・卵・大豆製品に豊富に含まれています。

動物実験では、ステロイド投与で減った筋肉量をBCAAの経口投与が回復させることが分かっています。特にロイシンは、筋肉を作るスイッチを入れる重要な役割を果たします。また、高齢者を対象にした研究では体重1kgあたり1.1g以上(/day)のたんぱく質を摂ることで、筋肉量の維持に効果的という報告があります。これは体重60kgの方なら、1日66g以上のたんぱく質が目安になります。「毎食、手のひら1枚分くらいの肉・魚・卵・豆腐を食べましょう」よく言われることですが、目安としては分かりやすくとても良い指標です。

さらに、HMBというロイシンの代謝産物についても、筋肉の分解を抑える働きがあります。サプリメントとして1日3gの摂取で効果が見られていますが、まずは食事からのたんぱく質摂取を優先しましょう。それでも不足する場合に検討するのが良いと考えられます。

2. オメガ3脂肪酸——効果は状況次第?

魚油に含まれるEPA・DHAは、心臓や脳の健康に良いことで知られています。一方、筋肉への効果については研究結果が分かれています

高齢者への臨床試験では、EPA 約1.9g/日とDHA約 1.5g/日を8週間摂取したところ筋肉合成が促進されたという報告があります。また、6ヶ月の摂取で筋肉量と筋力が増えたという結果も出ています。一方動物実験では、ステロイド投与時にオメガ3を与えると筋萎縮が悪化したという報告もあることから、意見は分かれます。EPAもDHAも、基本的に食品から摂る分には良い効果が得られます。青魚を週2〜3回食べることを心がけましょう。

3. ビタミンD——不足している人ほど効果的

ビタミンDは骨だけでなく、筋肉の健康にも重要です。動物実験ではステロイドによる筋肉減少をビタミンD3が抑えることが示されています。

人間の研究では、血中ビタミンD濃度が低い人においてサプリメント効果が高いことが分かっています。ビタミンD欠乏の高齢者に週3回10,000 IUを6ヶ月投与した研究では、筋肉量が明らかに増加しました。日本人の90%以上は少なくとも冬場にはビタミンD欠乏が見られるという研究もあります。(可能な方は血液検査でビタミンD濃度をチェックすることをお勧めします。)不足が考えられる場合はサプリメント(1日800〜1000 IU程度)も検討しましょう。食事では、きのこ類や魚(鮭、さんま)を意識的に摂ると良いです。

4. ビタミンEとC——抗酸化作用で筋肉を守る

ステロイドは体内に酸化ストレスを引き起こし、これが筋肉を傷つけます。ビタミンEとCは、この酸化ストレスを軽減する働きがあります。

実験ではビタミンEがステロイドによる筋肉ダメージを抑えることが確認されています。また、ビタミンC不足のマウスは筋肉量が著しく減り握力も低下しましたが、ビタミンCを補給すると回復しました。

ビタミンEはナッツ類・植物油・アボカドなどに、ビタミンCは野菜や果物に豊富です。「毎食、色の濃い野菜を食べる」「1日1回は果物を食べる」これらが筋肉を守ることにつながります。

5. スルフォラファン——注目の成分

ブロッコリースプラウト(新芽)に豊富なスルフォラファンは、最近注目されている成分の一つです。細胞実験ではステロイドによる筋肉分解を抑え、筋肉合成を促す効果が確認されています。

まだ人間での研究は少ないですが、ブロッコリーやブロッコリースプラウトは他の栄養素も豊富です。食事に取り入れる価値は十分にあると考えます。私自身もサラダを食べる際にひとつかみのブロッコリースプラウトを加えています。


栄養だけでは不十分——運動との組み合わせが大切

調査された研究のうち、約半数が栄養介入と運動を組み合わせています。これは非常に重要なポイントです。いくらたんぱく質やビタミンを摂っても、体を動かさなければ筋肉は十分につきません。特に、筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)との組み合わせで、筋肉量と筋力の両方が改善することが分かっています。「薬を飲んでいるから動かない方がいい」と思う方も多いです。医師の指導がある場合は例外ですが、実際は無理のない範囲で体を動かすことが筋肉を守ります。スクワットなどの軽い運動や、20分程度の散歩など簡単な運動と、栄養バランスの良い食事を組み合わせることが大切です。

参考までに、臨床試験では主に以下の3つを評価しています:

  1. 筋肉量:DXAやCT、体組成計で測定
  2. 筋力:握力測定、脚の筋力測定など
  3. 身体機能:歩く速度、椅子からの立ち上がりテストなど

つまり、単に筋肉の量だけでなく、実際に使える筋肉かを重視しています。体重計の数字だけでなく、「階段が楽になった」「ラウンドの最後まで楽しく回れた」といった生活の質の変化が大切な指標です。


まとめ

これらの研究から言えることは栄養の力で筋肉を守ることは可能だということです。

現時点で科学的に推奨できるのは、以下の点です:

✅ たんぱく質をしっかり摂る
毎食、手のひら1枚分の肉・魚・卵・豆腐を目安に。

✅ ビタミンDをチェック
冬場を中心に不足している場合はサプリメントも検討。食事ではきのこ類や魚を積極的に。

✅ 抗酸化ビタミンを野菜・果物から
毎食、色の濃い野菜を。1日1回は果物を。

✅ 青魚を週2〜3回
オメガ3脂肪酸は、心臓にも筋肉にも良い効果が期待できます。

✅ 無理のない範囲で体を動かす
栄養だけでは不十分です。簡単なスクワットや散歩でも効果があります。

不安なこと、その他ご質問等がございましたら、いつでも館内でお声がけください!


参考文献:
Camila E. Orsso et al., “Mapping ongoing nutrition intervention trials in muscle, sarcopenia, and cachexia: a scoping review of future research,” Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle, 2022; 13: 1442-1459.
Min-Kyeong Lee et al., “Nutrients against Glucocorticoid-Induced Muscle Atrophy,” Foods, 2022; 11: 687.

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中島 遥

管理栄養士 パーソナルトレーナー
長野県出身。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科にて管理栄養士、栄養教諭の資格を取得。卒業後は小学校で管理栄養士として働きながら、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの資格を取得。
現在、トータルゴルフフィットネスでは、「食事と運動」両方の面からお客様の望む身体作り、パフォーマンス向上に貢献できるよう努めている。

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