トータルゴルフフィットネス 管理栄養士の中島です。
いよいよゴルフシーズン本番!5時間を超えるラウンドで私たちが浴びる紫外線量は日常生活の比ではありません。実は顔の老化の約80%は紫外線への露出が原因であるとも言われております。紫外線は単なる日焼けだけでなく、シミ、シワ、皮膚の乾燥、さらには集中力の低下や全身疲労にも直結します 。
多くのゴルファーが日焼け止めを塗っており、紫外線対策の一丁目一番地ともいえます。しかし、汗による流出や塗りムラ、塗り直しの手間を考えると、外側からのケアだけで十分と言えるのでしょうか 。そこで今、スポーツ栄養学と美容皮膚学の双方から注目されているのが、食事やサプリメントによる『経口フォトプロテクション(飲む紫外線対策)』です 。
今回もいくつかの研究論文に基づき、ゴルファーが内側から備えるべき栄養戦略を解説します。
1. 紫外線がゴルファーに与える影響

紫外線(UVR)には、主に波長の長いUVAとエネルギーの強いUVBの2種類があります 。これらが肌に到達すると体内に活性酸素(ROS)を大量発生させます。そしてこのROSが、細胞やDNAにダメージを与える酸化ストレスを引き起こします 。
この酸化ストレスは肌の老化(光老化)を加速させるだけではありません。全身のコンディショニングをも乱し、疲労や脳機能の低下(判断力など)の隠れた原因となります 。ゴルファーにとっての紫外線対策は単なる美容の問題ではなく、パフォーマンスを維持するためにも重要です。
2. 驚異の『無色カロテノイド』

日焼け対策の栄養素といえば、トマトやスイカに含まれる赤色の色素であるリコピンが有名です。一方、近年の研究ではトマトや人参に含まれる「フィトエン(PT)」と「フィトフルエン(PTF)」という無色カロテノイドが極めて重要な役割を果たしていることが分かってきました 。これらには、他の栄養素にない興味深い特徴があります。
UVを直接吸収する: 一般的に色のついたカロテノイドは可視光線を吸収しますが、フィトエンは「UVB」を、そしてフィトフルエンは「UVA」を直接吸収する特性を持っています 。つまり、細胞レベルで紫外線のフィルターとなってくれるのです。
高い吸収率(バイオアベイラビリティ):薬などの効果を判断する指標として、バイオアベイラビリティがあります。これは投与した薬物のうち、どれだけの割合が未変化のまま全身の循環血液中に到達するかを示します。どれだけ効果の高い成分であったとしても、体内でその効果を発揮してくれなければ意味がありません。参考とした研究によると、フィトエンはリコピンに比べて小腸での吸収効率が約4倍も高いことが示されています 。
肌への蓄積: 摂取されたこれらの成分は、血中だけでなく皮膚や肝臓などの組織にしっかり蓄積されることが分かっています。長期間にわたって基底防御を形成する可能性があります。
3. 『日焼けしにくい体』への変化

実際にこれらの成分を含む栄養介入がどれほどの効果をもたらすのでしょうか。いくつかのデータを見てみましょう。
最小紅斑量(MED)の向上
ビタミンC、E、D3、セレニウム、そして無色カロテノイドなどを含むサプリメントを12週間摂取した試験があります。この結果、日焼けで肌が赤くなるまでに必要な紫外線量(MED)が、わずか2週間後から増加し始めました。最終12週間後には8.1%向上しました 。また、別の研究ではMEDが20%も向上した例もあります。継続的な摂取によって、日焼けしにくい体へと変化することが示されました。
抗酸化力のブースト
肌の総還元力(酸化に抗う力)は12週間で22.7%向上し 、脂質の酸化ストレス指標(MDA)も有意に低下しました 。この結果は、ラウンドを含め多くの紫外線に暴露することで蓄積される身体へのダメージを内側から消去しやすいということを意味します。
肌質の改善
紫外線対策と同時に、肌のコンディションも向上することが示されました。
肌の輝き(Radiance):+36.1%
肌の弾力(Elasticity):+28.0%
肌の水分量(Moisture):+13.8%
抽象的な指標もありますが、12週間の摂取で被験者の多くが「肌がより保護されている」「日焼けに対して強くなった」と実感したとのことです。
4. ゴルフライフに取り入れよう!

この内側からのブロックを最大限に活かすためのポイントをまとめます。
① トマト製品を味方につける
フィトエンやフィトフルエンの主要な供給源はトマトやその加工品です 。特にトマトジュースはリコピンだけでなく無色カロテノイドの吸収効率も非常に高いです。手軽に摂取できる最強の飲む日焼け止めです 。これらの成分は加熱に強いことから、トマトソースやケチャップなどの加工品も有効です 。私自身も大学時代から毎日、トマトジュース1本が日課です!
② シダ植物(ポリポディウム)の活用
研究で用いられたサプリメントには、中南米原産のシダ植物であるポリポディウム・レウコトモスのエキスが含まれていました 。この成分はDNAのダメージを防ぎ、肌の抗酸化システムを強力にバックアップする成分です。注意点として、カロテノイドと異なりこの成分は基本的にサプリメントから摂ることとなります。私自身は効果を限定的と考えております。また、皆さんがお持ちの疾患によっては是非が問われます。お飲みになる場合はかかりつけの医師や管理栄養士に相談してください。現状は世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の禁止薬物リストには含まれていませんが、今後も注意が必要です。
③ 「朝」のルーティンにする
日焼け止めはプレー直前に塗りますが、栄養素による紫外線防御のためには、成分の血中・組織濃度を安定させることが重要です。定期的な摂取を習慣化し、体内での貯金を作っておくことが夏場のコンディショニングの鍵となります 。
④ 塗る日焼け止めとの「ハイブリッド」
経口摂取による日焼け防止指数(SPF相当)は、直接塗るタイプに比べれば高くありません 。紫外線対策のメインはあくまでも日焼け止めです。しかし、外側からの防御と、内側からの長期的な防御を組み合わせることが、身体を守ることに繋がります。ハイブリットでの紫外線対策を心掛けましょう。
結論:美しさと強さは内側から始まる
「健康的で美しい肌は、内側から始まる(Healthy and beautiful skin starts from within)」という言葉があります 。 最新の科学は、私たちが食べるものが紫外線という過酷な環境から体を守る盾になることを証明しています。次回のラウンドはお気に入りの日焼け止めに加え、一本のトマトジュースを準備しましょう!2週間後、あなたの肌やパフォーマンスがタフになっているはずです。
主な参考文献:
Granger C, et al. Dermatol Ther (Heidelb). 2020;10:163-178.
So B, Kwon KH. Sustainability. 2023;15:4416.

