トータルゴルフフィットネス 管理栄養士の中島です。
「前半は良かったのに、後半になると急に集中力が維持できなくなる……」
皆さんはこの様な経験がありますか?
ゴルフは4〜5時間以上にわたり、体のパフォーマンスだけでなく、精神的なコントロールを維持する必要があります。
このようなパフォーマンスの低下は、単なる体力の衰えや技術不足だけが原因とは言えません。身体の恒常性を維持する自律神経系(ANS)の乱れも影響します。特に梅雨から初夏にかけて、気候ストレスにより自律神経が乱れやすい時期です。
今回は自律神経のバランスを良好に保ち、日頃のコンディショニングを維持するための栄養について解説します!
自律神経のバランスがパフォーマンスを左右する

私たちの身体は活動時に優位となる交感神経と、休息や回復、消化を司る副交感神経の2つが相互に作用し合っています。この両者のバランスを調整することで、体内の環境を一定に保っています。これらの神経を直接計測することは困難ですが、バランスを評価する指標として心拍変動(HRV)が用いられます。この心拍変動が良好な状態に保たれている(=副交感神経の活動が適度に含まれている)ことが、日々のコンディショニングに直結します。
近年の研究により、私たちが普段口にする食事や3大栄養素のバランスが、これらが自律神経系の活動をダイレクトに変化させることが分かってきました。
3大栄養素が自律神経に与える影響

2024年に発表された研究では、摂取する栄養素の比率(炭水化物と脂質)が、食後の自律神経活動をどのように変化させるか検証されました。
研究によると、適切な比率の高炭水化物食を摂取したあとには、リラックスや回復を司る副交感神経の活動(心拍変動のHF成分)が有意に向上することが確認されました。適度な炭水化物の摂取は脳内のセロトニン分泌を刺激し、心理的な安定をもたらすメリットも報告されています。
一方で高脂質食(特に飽和脂肪酸が多い)を摂取したあとは、消化・吸収のタイミング(食後5〜6時間後)にかけて、交感神経活動(LF/HF比)が有意に高まりました。脂質の消化には時間を要するため、長時間にわたって自律神経系に過剰なアクセル(交感神経の興奮)を踏ませ続けるストレスとなります。このことが、身体の休息やリラックスの妨げとなります。
ラウンドの休憩中にカツカレーやラーメンといった高脂質・高糖質の食事を選ぶことは、プレー後半の時間帯に交感神経の過剰な緊張や、自律神経バランスの乱れを招くリスクがあります。
自律神経を整える3つの栄養素

では、自律神経のバランスを安定させ、日々のアクティブな活動をサポートするにはどのような栄養素が効果的なのでしょうか。有効性が実証されている成分をご紹介します。
① 自律神経のバランスを維持する「マグネシウム」
マグネシウムは神経伝導や筋肉の収縮を調節し、神経系の興奮と抑制のバランスを保つために不可欠なミネラルです。 血中マグネシウム濃度が高い人ほど副交感神経活動(HRV)が良好であり、不足すると交感神経が優位になりやすいことが分かっています。さらに、副交感神経の主要な伝達物質であるアセチルコリンの合成や放出をサポートし、ストレス症状の緩和や睡眠の質の向上に寄与します。
推奨される食材: 緑葉野菜(ほうれん草など)、ナッツ類、種実類。
② ストレス応答を抑制し、リラックス状態を促す「L-テアニン」
緑茶の葉に含まれるアミノ酸の一種である「L-テアニン」は、脳内の過剰な神経興奮を抑制するGABA(ギャバ)の放出を刺激する働きがあります。 ヒトを対象とした試験において、L-テアニンを摂取したものがあります。心理的・生理的なストレス応答(心拍数やコルチゾールの上昇)が有意に抑制されました。過剰な交感神経活動を抑えつつ、副交感神経活動を維持できることが分かりました。
推奨される習慣: 朝のスタート前や休憩時に、適温の緑茶を飲む。
③ 慢性的な炎症を抑え、神経を守る「オメガ3系脂肪酸」
青魚(サバ、イワシ、鮭)や亜麻仁に豊富に含まれるDHAやEPAといったオメガ3系多価不飽和脂肪酸は、高い抗炎症作用を持ちます。また副交感神経の1つである迷走神経の活動も高めます。 これにより運動後の心拍数の回復や疲労からのリカバリーを助ける効果があります。
推奨される食材: 青魚(夕食やラウンド前後の食事に魚料理を選ぶ)。
結論:日々の食事もコンディショニングの一部
ゴルフにおいて優れたクラブや高い技術を持つことはもちろん大切ですが、それらをコントロールするご自身の身体や自律神経が乱れては、本来のパフォーマンスを発揮することは困難です。日頃の食事選びや、ラウンド中の休憩におけるメニュー選びは単にお腹を満たすためだけのものではありません。自律神経のバランスをコントロールし、18ホール最後まで快適に、かつ高いコンディションを維持するための極めて重要なマネジメントの一環です。
まずは「お昼のメニューを低脂質なものに変える」「朝に緑茶を一杯飲む」「ポケットにナッツ類を用意する」といった食事の工夫から始めてみませんか?
【参考文献】
Ścisłowska, D., & Furgała, A. (2025). The influence of nutrients and nutrition’s methods on the autonomic nervous system activity. Folia Medica Cracoviensia, 65(3), 37-50.
Satoh, T., & Kobayashi, H. (2024). Effects of High-Carbohydrate and High-Fat Diets on Parasympathetic and Sympathetic Nervous Activities: An Experimental Study Using Heart Rate Variability. Nutrition and Metabolic Insights, 17, 1-8.

