「明日はラウンド!前日の夜は何を食べたらいい?」
皆様からのご質問としていただくことが多く、ラウンド前になるとこの様な疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
「炭水化物をたくさん食べた方がいい?」
「夜にご飯を食べると太るんじゃない?」
「お肉をしっかり食べておいた方がいい?」
今回は、ラウンド前日の夕食をどのように考えたら良いか、いくつかの文献をもとに整理してみましょう!
まず意識したいのは「糖質」

糖質はどのくらい必要か
ご飯やパン、パスタなどに含まれる糖質は、体内でブドウ糖として利用されるだけでなく、グリコーゲンという形で筋肉や肝臓に蓄えられます。筋グリコーゲンは運動時の重要なエネルギー源であり、肝グリコーゲンは血糖値を維持するために重要な役割を持っています。つまり、前日の食事で糖質を十分に摂っておくことは、翌日のラウンドに向けて使える糖質を準備しておくことにつながります。
また、運動後の回復にも糖質が必要です。運動によって筋グリコーゲンを大きく消費した場合、糖質の摂取量が少ないと24時間後の回復が不十分になることが報告されています。一方、十分な糖質を摂取することで、筋グリコーゲンの回復が促されます。
競技前の糖質摂取量は競技時間や運動量によって調整しますが、長時間の運動では競技前24時間に7~12g/kg/日程度の糖質摂取が用いられることがあります。ゴルファーにも当てはめることができると考えますが、これは前日の夕食だけで7~12g/kg食べるという意味ではありません。前日の朝・昼・夕食を含めた1日全体で考える量です。
ゴルフというスポーツ
スポーツによっては、競技前に糖質を大量に摂取して筋グリコーゲンを最大限まで高めるカーボローディングという方法があります。これは長時間の持久系競技では有効な戦略です。一方で、ゴルフはマラソンなどとは競技特性が異なります。ゴルファーに対する栄養の研究はまだ限られており、一般的なゴルファーが前日に極端なカーボローディングを行う必要性については十分な根拠がありません。よって、前日の夜だけ頑張るのではなく、普段から糖質を不足させず、前日も主食をしっかり摂る、という考え方が現実的です。
夜は太るから炭水化物を抜く?
ダイエット中の方には、特に気になるところです。しかし、糖質を食べた=そのまま脂肪になるわけではありません。食事から摂った糖質はエネルギーとして利用されるほか、筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄えられます。もちろん、1日の消費量を大きく上回るエネルギーを継続的に摂れば、体脂肪の増加につながります。また、糖尿病を含む各種疾患をお持ちの方は別途相談が必要です。重要なのは糖質をたくさん食べることではなく、必要な糖質を不足させないこと。翌日にゴルフがあるからといって、普段より極端に食べる必要もありません。逆に体重を気にしている方であっても、運動をする場合は必要量を補う必要があります。
結論、前日の夕食はどんな食事にする?

結論、特別な食事は必要ありません。つまらない回答ではありますが、
主食:ご飯・パスタ・パン・うどん・そばなど
主菜:肉・魚・卵・大豆製品など
副菜:野菜・海藻・きのこなど
果物:季節の果物
という、普段からバランスの良い食事を基本にします。
先日、とあるゴルフ場にある宿泊施設のシェフとコラボディナーをさせていただきました。イタリアンのレストランで、ラウンド前日のメニューは下記の通りです。
・フォカッチャ
・前菜
・かぼちゃのスープ
・サラダ
・パスタ
・メインの肉料理と野菜
・フルーツとヨーグルト
といったシンプルなものです。(メニューの詳細が気になる方、イベントにご興味のある方はぜひ9月のイベントにご参加ください。お問い合わせフォームからお待ちしております。)
ですが、必要な糖質をパスタや芋類、果物などから十分にとり、余分な脂質をカットした調理に、その他必要な栄養素を調整すると、
「あんなに食べたのに翌日の朝、胃もたれせずにすっきりだった!」
「最後まで疲れずラウンドできた!」
というお声をいただきました。特別な食材は何一つありません。
たんぱく質もしっかり摂る

糖質をしっかり摂る一方で、たんぱく質も不足させないことが大切です。たんぱく質は、筋肉をはじめとする身体の組織をつくる材料であり、運動後の身体の修復にも関わります。
運動習慣のある人では、一般的な成人の必要量よりも多くのたんぱく質が必要とされます。近年の国際的なスポーツ栄養の推奨をまとめたレビューでは、アスリートのたんぱく質摂取量として1.6〜2.4 g/kg/日が示されており、競技やトレーニング量、エネルギー摂取状況、身体組成の目標などによって調整することが推奨されています。
例えば体重70kgなら、
- 1.2 g/kg → 84g/日
- 1.6 g/kg → 112g/日
- 2.0 g/kg → 140g/日
が目安になります。
ただし、これは1食で摂る量ではなく、1日の合計量です。また、ラウンドがあるから前日の夕食でたんぱく質を大量に摂るという必要はありません。大切なのは、1日の必要量を確保したうえで、朝・昼・夕など複数の食事に分けて摂ることです。ゴルファーの皆さんは、1回の食事で20〜40g程度を一つの目安として考えましょう。体格によって、また筋力トレーニングを行っている人では、さらに必要量が増える場合があります。
脂質は「減らしすぎ」より「摂りすぎ」に注意

脂質も身体には必要な栄養素です。ただし、ラウンド前の食事では、脂質を大量に摂ることはおすすめしません。脂質の多い食事は消化に時間がかかり、胃腸の負担になる可能性があるためです。
例えば前日の夜に、
・揚げ物を大量に食べる
・脂身の多い肉を大く食べる
・クリーム系の料理を重ねる
といった食事は避けましょう。
低GIの糖質を選んだ方がいい?
これもよくある疑問です。「血糖値が急に上がらない低GI食品の方が、翌日のゴルフには良いのでは?」と思うかもしれません。しかし、運動前の低GI食が必ずしもパフォーマンスを向上させるとは限らないことが示されています。
そのため、前日の夕食ではGIを細かく気にするよりも、
・必要な糖質を摂る
・食べ慣れているものを選ぶ
・消化に問題がない(生ものや揚げ物は避ける)
・普段の食事として無理なく続けられる
これらが優先です。
前日の夕食で意識したい5つ
① 主食を抜かない
翌日のラウンドに向けて糖質を確保する。
② たんぱく質を適量摂る
肉・魚・卵などを普段通り取り入れる。
③ 脂質を摂りすぎない
翌日の胃腸への負担を考え、脂の多い食事としない。
④ 食べ慣れたものを食べる
普段食べ慣れていない特別なものは食べない。
⑤ 夕食だけで考えない
前日の朝食・昼食から翌日の朝食、ラウンド中までを一つの流れとして考える。
最後に
ラウンド前日の夕食で一番避けたいのは、明日はゴルフだからと、普段と全く違う食事をすることです。
ゴルフのパフォーマンスを考え、
前日までに必要な糖質を確保する
↓
当日の朝食で再びエネルギーを補給する
↓
ラウンド中も必要に応じて糖質・水分を補給する
この様な流れで考えましょう。
18ホールを最後まで戦うための準備は、ティーオフの瞬間から始まるのではありません。前日の食事から始まっています。
今回はベースとなる夕食の考え方をお伝えしました。その他のビタミン・ミネラル・サプリメントなどについては、また別途コラムを作成します!
参考文献
Namma-Motonaga K, et al. Nutrients. 2022.
Nagashima Y, et al. Nutrients. 2024.
Nagashima Y, et al. Nutrients. 2023.
Jäger R, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2017;14:20.
Morton RW, et al. Br J Sports Med. 2018;52:376-384.

