トータルゴルフフィットネス管理栄養士の中島です。
ラウンドからの帰り道、気づけば運転中にウトウト。あるいは家に着いてソファに座った瞬間、気絶するように眠ってしまった――。そんな経験はありませんか?
「たくさん歩いたから疲れたんだろう」と片づけてしまいがちですが、実は「身体の疲れ」と「眠気」は別の現象です。今回は、ゴルフ後の眠気について、睡眠・食事・水分補給という3つの切り口から考えてみます。
1. 「疲れた」と「眠い」は実は別もの

まず押さえておきたいのが、「疲労」と「眠気」の違いです。
疲労とは、身体や頭を使い続けた結果、力を発揮しにくくなったり、活動を続けるのがつらくなったりする状態のこと。一方で眠気は、起きている状態を保ちにくくなり、「眠りたい」と感じる状態を指します。
長時間歩いて脚が重くなるのは身体的な疲労ですが、座っているうちに自然とまぶたが閉じてしまうのは眠気です。両者は同時に起こることも多いものの、イコールではありません。実際、運動時の疲労を調べた研究でも、筋肉の働き・運動パフォーマンス・本人が感じる辛さは、それぞれ別の指標として評価されています(1)。
つまり、ゴルフ後の眠気を「歩き疲れたから」のひと言では片づけられそうにありません。他の要因にも目を向けてみる価値がありそうです。
2. 最初に見直すべきは「前夜の睡眠」

ゴルフの日は、普段より早起きになりがちです。いつもは7時起きの人が、ゴルフの日だけ5時起床――。就寝時間が変わらなければ、その分だけ単純に睡眠時間が削られてしまいます。
睡眠不足と日中の眠気の関係を調べた5件のシステマティックレビューでは、睡眠不足の条件のほうが、十分な睡眠を取った条件よりも、日中の主観的な眠気が有意に強くなることが示されています(2)。
つまり、ラウンド後の眠気は、プレー中の運動量だけでなく、スタート前からの睡眠不足が影響している可能性があるということ。早朝スタートの日ほど、前夜の就寝時間を見直す価値がありそうです。
3.昼食や血糖値のせいって本当?

「昼食を食べると眠くなる」「血糖値が急上昇するから眠い」――よく聞く話ですが、この原因を血糖値だけで説明するのは難しいです。
食後の眠気には、食事量・栄養素の構成・食べる時間帯・睡眠状態など、さまざまな要因が絡んでいる可能性があります。現状確認できる研究の範囲では、健康な人において、食後血糖の変動がラウンド後の眠気を直接引き起こすとは言い切れません。
こちらもよく質問いただくことですが、眠気対策として極端に糖質を制限するというのはおすすめできません。長時間に及ぶラウンドでは、むしろ運動に必要なエネルギーを十分に確保することのほうが、ゴルフパフォーマンス維持に重要です。
4.糖質補給は「身体の疲労対策」には効く

糖質は、筋肉が運動するための重要なエネルギー源です。2021年に発表された96研究のメタ解析では、長時間運動中の糖質溶液摂取が運動パフォーマンスに有利に働くことが報告されております(3)。ただし、これは主に持久性運動のパフォーマンスに関する結果であり、「糖質を取ればゴルフ後の眠気が消える」という意味ではありません。実際、10件のランダム化比較試験をまとめた別のメタ解析では、運動前後の糖質飲料が運動後の実行機能(判断や注意の切り替えといった脳の働き)を改善させるという結果は確認されていません(4)。
身体のパフォーマンスに対する糖質の効果と、眠気や脳の働きへの効果は分けて考える必要がありそうです。ラウンド中は朝食・昼食に加えて、必要に応じておにぎりやバナナなどで補食を取り入れましょう。
5. 脱水や暑さはどう関係する?

特に夏のゴルフでは、脱水や暑さによる身体への負担にも注意が必要です。34研究をまとめた2023年のメタ解析では、脱水状態で運動した場合、主観的運動強度(本人が感じる「運動のきつさ」の数値)が有意に高くなっていました。暑熱環境でも主観的運動強度と心拍数が増加することが報告されています(1)。
ただし、これらが示すのは主に運動中の身体的な負担であり、眠気そのものではありません。脱水がラウンド後の眠気を直接引き起こすかどうかは、今回の研究からは判断できないと言えます。
それでも、運動中の負担を抑えるためには、気温や発汗量に合わせた水分補給は欠かせません。汗を多くかく日は、塩分補給もあわせて意識しましょう。
6.ラウンド後の眠気を軽減する4つの対策
- 前夜の睡眠時間を確保する 今回の研究の中で、眠気との関係がもっとも明確だったのは睡眠不足です。早朝スタートの日は、起床時刻から逆算して就寝時間を決めましょう。
- ラウンド中に適切なエネルギー補給をする 長時間運動中の糖質補給は、持久性運動のパフォーマンス改善につながるという研究結果があります。朝食をとったうえで、必要に応じて補食も取り入れましょう。
- 脱水と暑さへの対策をする 特に暑い日は、こまめな水分補給と休憩を心がけましょう。
- 眠気が強い場合は、無理に運転しない 睡眠時間を制限した19人の若年成人を対象とした実験では、45分の昼寝機会を設けると、その後の眠気が一時的に軽減しました(5)。ただし効果が翌朝まで持続したわけではなく、安全な運転を保証するものでもありません。強い眠気を感じたら、運転を続けず安全な場所で休憩してください。
まとめ
ゴルフ後の眠気は、長時間歩いた身体的疲労だけでは説明しきれません。今回紹介した研究からは、睡眠不足が日中の眠気を強めることがはっきり確認できました。一方で、糖質補給や水分補給は運動中の体調管理には欠かせないものの、ゴルフ後の眠気を直接予防する効果については、十分な根拠がないのが現状です。
ゴルフ後まで元気に過ごすには、まず前夜の睡眠を確保し、ラウンド中の食事と水分補給を適切に行うこと。ぜひ次のラウンドから意識してみてください。
なお、十分な睡眠をとっていても強い眠気を繰り返す場合は、睡眠時無呼吸症候群などの可能性もありますので、医療機関への相談をおすすめします。
参考文献
Pellicer-Caller R, Vaquero-Cristóbal R, González-Gálvez N, et al. Influence of exogenous factors related to nutritional and hydration strategies and environmental conditions on fatigue in endurance sports: a systematic review with meta-analysis. Nutrients. 2023;15(12):2700. doi:10.3390/nu15122700
Griggs S, Harper A, Hickman R. A systematic review of sleep deprivation and neurobehavioral function in young adults. Appl Nurs Res. 2022;63:151552. doi:10.1016/j.apnr.2021.151552
Bourdas DI, Souglis AG, Zacharakis E, Geladas N, Travlos AK. Meta-analysis of carbohydrate solution intake during prolonged exercise in adults: from the last 45+ years’ perspective. Nutrients. 2021;13(12):4223. doi:10.3390/nu13124223
Yang J, Han Q, Liu Q, et al. Effects of carbohydrate drinks ingestion on executive function in athletes: a systematic review and meta-analysis. Front Psychol. 2023;14:1183460. doi:10.3389/fpsyg.2023.1183460
Saletin JM, Hilditch CJ, Dement WC, Carskadon MA. Short daytime naps briefly attenuate objectively measured sleepiness under chronic sleep restriction. Sleep. 2017;40(9). doi:10.1093/sleep/zsx118

